携帯のアラームが鳴ったのは朝5時半。
目覚めはばっちり、コンディションも上々です。
今日が、今日こそが、私の釣り人生の第二幕が切って落とされる訳ですよ。
栄えある海外釣行デビュー戦に選ばれたのは、養殖池のバラマンディ!
そうです、体高があってパワフルさを前面に押し出すアイツですよアイツ。
これから行く池では出荷前のバラマンディがひしめく池で釣りができるのです。
運が良ければ出荷直前の10kgクラスの池にも入れるとのことで、誰も手を付けたことのないまっさらなバラマンディが入れ食いという、ボリヲタには桃源郷のような環境です。
まぁ、タイまで来て養殖池・・・という皆様の遠慮と容赦のない指摘はヒシヒシと感じます。
しかしです。もうね、ここまで来るとね、形振りは構っていられないのです。
一刻も早く、異国の地で魚を釣り上げて、ヤリィと叫ばないことには、私の人生が始まらない訳なのですよ。
案内するのは今回の釣行でお世話になったのは、タイでガイド業を営むスメットさん。
日本語もバッチリで頼りになるガイドです。
朝6時発、ホテルで待ち合わせということで、最初はドキドキしてましたが、ほっと一安心。
海外に入り浸る生活に突入して4年が経過しますが、やはりこのファーストコンタクトだけは今でも緊張します。
なぜなら、短期決戦かつ右も左も知らない状況下となれば、頼れる人を見つけることが生命線といっても過言ではありません。
養殖池や翌日のAMAZON池など、具体の情報は何も知らない私では、まず目的地にたどり着くのが困難です。
情報過多となった現代でも、最後に頼りになるのは人です。
きっと、こればっかりは今も昔も、そしてこの先も変わることはないでしょう。
滞在中、本当にお世話になりました。
で、バンコクから車を走らせること約1時間。
のどかな田園風景を抜けて到着したのは如何にも養殖してまっせ!って感じの皿池です。
この日は中型サイズ、といっても、3~5kgの池に案内してもらいました。
広さは50m×40mくらい。池にはよく見る2台の水車が回っています。
「水車前のやる気のない魚のそばからマイクロスプーンを通してバイトを引き出しました!」とかどや顔で言ってた気がします。7年前くらいに。
水は淡水じゃなくて海水。
トップでもバシバシでると聞いていたため、最初に結んだのはK-TENリップルポッパー。
とりあえず、ベイトの試し投げを兼ねて、池の真ん中にキャスト。
私、ベイトをキャストするの5年ぶり。
ブレーキ緩々。超テンプラキャスト、というかよっこいしょ投げです。
当然バックラッシュです。
「ベイト投げるの久しぶりなんです~グヘヘ」と気持ち悪い感じで自己弁護していた瞬間でした。
ガボッという音と共に、空中に翻る銀ピカ。
いきなりの出来事に一瞬、訳が分からず呆然と眺めていたのですが、ハッと我に返ってロッドをあおると、ゴッゴッと力強い手ごたえが伝わりました。
「おおおおっ!出た出た出た!」と素っ頓狂な声を上げながら、ファイト開始。
最初はドラグが緩々だったせいで、魚のなすがままにラインが出ていきます。
途中からかなりきつく締めたものの、魚の突進の度に、ジッジッと低い音が鳴ります。
手元に寄ってきても派手なジャンプと突っ込みで中々ランディングさせてくれません。
そうこうするうちに、ふっと手元が軽くなりせっかくの1匹目は無様にもバレてしまいました。
フックはがっちり掛かっていたように見えたけど・・・とルアーを確認すると、何と、針が根元から折れまがっています。
「ルアー純正のフックはすぐに伸ばされる」って情報は仕入れていましたが、百聞は一見にしかず、自分で体験して初めて意味が理解できました。
しかし、まさかここまでとは・・・・。
カルティバST-66のごんぶとフックに変えて、アドレナリン全開、逸る気持ちを抑えてルアーをキャストします。
すると3投目に着水からの1アクションで、再び水面が爆発。
そして同時に伝わる重量感!
ファイト中、腰砕けにはならない!と誓っていましたが、どこか腰が引けてる感があります。
慎重に魚を寄せるのですが、一瞬で速度がMAXになる瞬発力、トルクのあるパワー、簡単にはやられてくれません。
体育会系全開のマッスル、良い筋肉してんじゃん!
ここは水深の浅い皿池ですが、ストラクチャーの多いヘビーカバーや、水深の深い場所だったら、この力強さ、手ごわさは何倍にもなるでしょう。
しかし、それでも、最後は丁寧にやり取りをして、何年越しか分からない念願の、海外での1匹目をキャッチ!!!!
ヤァアアアアアアリィイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!
3か月か?それとも10年か?
ここまで本当に長かった、長かったのです。
最初に憧れを抱いた日はいつだったかはもう思い出せません。
でも、この日、この瞬間が、釣り人としての人生第二幕の幕開けなんや!
釣り堀のバラマンディ、略してボリマンディでも良いんやでぇ!
割とあっさり釣れて、拍子抜けしていたのは内緒の話でも良いんやでぇ!
とにかく!0が1になった!それだけで十分です。
そこにどれだけの隔たりがあったか、中々言葉では言い難い感情が湧きあがり、拳を握りしめて小さくガッツポーズ。
銀色の巨体、煌めく鱗、がっしりとした体格。
顔つきはシーバスに似ていますが、同サイズでは比較にならないこの威圧感、存在感
マジで格好良いです、
K-TENリップルポッパー限定クリアカラーだぁあああああ!
1日を通じて、こいつへの反応の良さは際立ってました。
この後、ルアーとタックルを変えながら色々試してみますが、魚は延々と釣れ続きます。この釣れっぷりは管釣り解禁日の釣れ具合。それがずっと続きます。
釣ったら池のお兄ちゃんがフックを外してリリースしてくれます。大名フィッシングです。
俺は釣り人だから自分でやるぜ!と言いたいところですが、養殖池の魚のダメージを最小限に抑えるためだから、素人はすっこんでろです。
世の中はかくも合理的に回っているのです。
まぁそうは言っても俺の30lbボガ様に活躍してもらうために、ほとんど自分で外したんですけどね、ええ。
バイブレーションでも。
シンキングペンシルでも。
ポッパーでも。
S字系でも。
トップでも釣れますし、沈むルアーでも釣れます。
それでも流石に渋くなる時間帯が来るのですが、そんなときのために、持ってきたんです。
60LBのリーダーでもちゃんと水を押してる凄いやつ。流石はオヤジです。
フリップにフォール、イレギュラーアクションで一撃です。
スピニングタックルでのやり取りは、主導権は完全に向こう。
PE2号なので、ラインパワー的にはまずやられることはないのですが、ロッドが持つかは超不安。
おそらく、もっと無理をしても大丈夫だろうと思いましたが、チキンな私は日和って安全運転で押し通しました。
この後も、延々と、手を変え、品を替え、釣り続けます。
スメットさんも釣ります。GT用ポッパーで。
デイズ+スコーピオンDCでも釣ります。
フックが折れ曲がっても釣ります。
朝ごはんも食べて栄養を補給しつつ、釣り続けます。(豚ミンチ&目玉焼きのせご飯。当然、美味し!)
ここまで釣れると飽きるを通り越して笑うしかありません。
釣れ続けると言っても、魚はパワフルな4kgクラスのバラマンディ。
滅多にある機会ではありませんので、ROUF EXPEDITIONの性能を試すべくドラグを閉めて、ロッドのパワーで魚と向き合います。
PE5号+60LBのラインが切られることはほぼありえませんので、ドラグをガチガチに閉めれば、後はロッドのパワーのみの勝負です。
グッグッと力強く引きこまれる突進を、バットからティップまで、ロッド全体のしなりとパワーでいなし、強引にこちらに頭を向けて、一気に巻き取ってランディング。
足元の抵抗やエラ洗いはロッドワークでかわします。
合わせさえしっかり決めていれば、相当、強引なやりとりでもばれません。
今回のメインタックルのROUF EXPEDITION & RYOGA。強いぞー格好良いぞー。
自分にとって、ここまでパワーのあるタックルで魚を相手にするのは未知の領域。
最高の実地訓練です。
そもそも魚に出会うことすら困難な、下手くそな自分が積む何年分もの経験を1日で得られます。
たかが釣り堀と言えども、魚とのやり取りは、実際にやってこそなんぼの世界。
ドラグのパワーを調整しながら、魚の引き味を楽しみ、みっちり訓練を積むことができました!
ひたすら釣り続けること5時間。
手にマメができて、マメが潰れる寸前まで釣り続けたところでタイムアップ。
30匹を超えたあたりから、数えるのが面倒になりましたが、少なく見積もって、50匹くらい釣りました。
4kg平均のバラマンディが50匹です。50匹て。
途中、釣りが雑になったりはしましたが、最初から最後まで、うひゃうひゃと笑顔で釣り続けました。
これだけのために、タイに来てもよいのではないかと思うほどの充実感。
そうです、ボリオタの桃源郷はタイにあったのです。
ありがとうバラマンディ、ありがとうバラマンディを育てたスタッフの皆。
初っ端から、両手に豆ができるほど魚を釣り倒すなんて、奇跡としか言いようがありません。
その直前はボートシーバスで閣下に凹られてますし。
貴方達が育てたバラマンディは、誰かの胃袋だけじゃなく、ある底辺アングラーに救いをもたらしてくれました。
今後、21世紀覇者としてのMy 覇道が完遂された際には、ゴリラ史の転換となった1日として後世に残されることになるでしょう。
まぁ「俺、海外まで来て釣り堀相手に何やってんだろう・・・」という何となくの喪失感も、もれなく付いてくるけどな!
そんな感じで1日目。
初日にして本釣行の勝利を揺るぎ無いものにした大勝利の1日でした。
釣果には大満足ですが、大事なのはそこではありません。
サイズだとか、数だとか、そんな話はどうでも良いのです。
海外に来て、釣竿を振り回し、挙句の果てに魚を釣って、ヤリィと叫ぶ。
それだけで満足にして過分、必要条件は満たされました。
ここからは、十分条件をいくつ満たすかという話。
来て良かった。本当に良かった。
これでもっと頑張れる。もっと先に行ける。自分にとって、幕開けとなった1日でした。
「オルテガ! マッシュ! モビルスーツに ジェットストリームアタックをかけるぞ!」
1日目おまけ。タイの黒い三連星です。
アジアにおいても規格外の連邦の黒い奴に怯えを隠せない模様。